2012年12月30日

四川省・九寨溝旅行とチベット族


メールでこじれた仲が、会えば解決することってありますよね。
それだけ、実際に会って話すことは大切なのだと思います。

最近、日中の関係が怪しくなってきています。
そのことについては、ここではコメントしません。
ただ実際に中国に行ってみると、日本で見聞きするのと随分違う印象を受けました。
そこで、私が10日間の中国旅行で感じたことを書いてみようと思います。


















私が中国に行ったのは、2年前の2011年です。ちょうど東日本大震災が起きる直前でした。場所は中国内陸部、四川省です(右地図参照)。州都である成都、近隣の重慶は工業都市として近年は特に有名です。一方で四川省には少数民族の自治区もあり、チベット族の方々が暮らしています。余談ですが、私はこのころ宮城県の内陸部に住んでいました。今回の旅行のおかげで難を免れたことになります。その前の宮城内陸(栗駒)地震の時も、たまたま東京に出ていて助かったし、意外と地震運は強いのかも…?


さて、今回の旅行での主目的は、チベット族の自治区を訪れることでした。
もともと登山が好きなこともあり、チベット族やシェルパ族など山岳民族にはある種の憧れを持っていました。荒れ地に翻る原色の旗、神秘的なチベット仏教、ぜひ自分の目で見てみたいと思いました。さらに中国政府がチベット族を迫害していることへの反感もあり、save Tibet のシャツを着て行こうかと真剣に悩みました。結局は周囲に反対されて止めましたが、そうでなければ今頃投獄されてたかも?まあオーストラリア人がsave whale (捕鯨反対)シャツを着ていたら日本人はむかつくだろうし、人間に絶対的な倫理ルールなんてないですからね。




成都をバスで出て何時間経っただろうか。10時間単位で乗っていた気がします。川はいつしかせまくなり、水は見たことのない水色に変わっています。外国の氷河から流れる河川のような色です。周囲は草木の生えない岩山となりました。このあたりの標高は3000mを超えています。




ときおり現れる集落には、村役場なのか五星紅旗を掲揚した建物が。色彩の乏しい荒れ地では鮮やかに見えました。やがて世界遺産である九寨溝(きゅうさいこう・གཟི་རྩ་སྡེ་དགུ།)に到着しました。




九寨溝は、高地の谷あいに形成されたカルスト地形です。石灰岩水系に特有の鮮やかなブルーが、早春の残雪と対照的です。ほかにも幾重に重なる小滝群や、大きな湖などが点在する美しい場所でした。





そして水際にはこれが!!!!!
マニ車!!!!

マニ車とは、チベット仏教に特有の宗教設備です。
円筒の内部に経文を収め、これを一回転させるだけで一回お経を読むのと同じ功徳が得られるという、なんともずぼら 合理的な宗教具。外周にはマントラ(真言)を書いてあります。回す方法は手で持ってくるくるさせたり、お寺の大きいのを回したり、さらには水力や風力で自動化(!)したものまであります。これはすごい。

しかし、この簡略化の精神は日本の大衆仏教と同じ感覚がありますね。仏教を広める際、法然上人は6文字の念仏を唱えることで救われると言った。日蓮上人は南無妙法蓮華経と唱えることで、法華経全てを読経するに同じといった。宗教とはそういうものなのかも知れません。

ちなみに、ここ九寨溝の宗教はチベット仏教ではなくボン教だそうです。
ボン教のマニ車は反時計回りで、チベット仏教とは逆だとか。






チベットの家畜・「やく」とやく使い




鮮やかなチベットの旗




















自然保護区内にあるチベット村

九寨溝にはチベット族の村があります。そのうちの一部は観光化されていて、外国人も入村することができます。ということで入ってみました。




















チベット族の伝統的な食事。中華料理とは趣が異なります。豆とヤクの乳のお茶がメインでした。そもそも九寨溝はチベット族の土地で、九つのチベット族の村、というのが地名の由来だそうです。なんだか北海道の地名みたいですね。

























さて、チベット族の土地から成都に帰ってきました。
一日で標高3000mを超えたためか、少し高山病になってしまいましたが、成都ですぐに回復。
こんな「いかにも中国」な旗を見つけて喜びます。




















これは、峨眉山というお寺です(確か)。峨眉山は中国3大霊山の一つで、その由緒は紀元前300年に遡るという名刹です。紀元前ってすごいですね。峨眉山は標高3000mを超える独立峰で、雪が降り、かなり寒かったです。標高3000mって、日本なら北アルプス槍ヶ岳の頂上位の高さですからね。峨眉山は全山が霊場として保護されていたため、貴重な動植物が多く残り、これも一帯の価値を上げています。また、山麓の標高は500m程度なので、標高差が2500mを超える巨大な山塊を形成していますその巨大さはすさまじいものがあり、古生代末に起きた地球最大規模の大量絶滅(P-T境界)は峨眉山の噴火が原因とする説があります。これについてはシベリアの超巨大火山噴火の方が本命らしいですが、ロマンがありますね。ちなみにこの大量絶滅、生物多様性が回復するのに1000万年もかかったそうです…。人類誕生から現代までの5倍くらいか…w




峨眉山の山頂




狛犬的な立場に、なぜかゾウが…



 

ちなみにこのゾウ、ほかのお寺にもいました

今回の旅で感じたことを一言で表すなら、「宗教が同じ安心感」かも知れません。これまでオーストラリアやマレーシアに行ったことがありますが、そこは完全に外国でした。しかし今回の旅行では、仏教のお寺、仏像、同じように祈る人々に会いました。同じ宗教圏にいるのだと実感しました。もちろん知識では知っていましたが、これは実際に行かないと体験できない感覚だと思います。

また、チベットのことを見聞きするうちに、中国は多民族国家であることを改めて実感しました。民族問題って難しいですね。たとえば我々も、アイヌ民族を征服し、土地を奪った過去があるわけです。現在でもその差別は続いていて、「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」が平成20年に国会採択されています。民族差別は、日本でも決して過去の問題ではないそうです。このあたりに無関心で「日本は単一民族国家」なんて言う人は、チベット問題について語る資格があるのか…、ちょっと考えてしまいました。

ともあれ。
今回の旅行は大変満喫しました。
そして大変すばらしいお土産まで買ってきたので、また次回にご紹介します(=゚ω゚)ノ
  

 (チベット族のマニ車に続く)

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