2012年10月29日

汚染された水を飲用に!浄水器の使い方

トキソプラズマ感染を予防するために の続き)


前回、トキソプラズマは水でも感染すると書きました。
日本では水由来のトキソプラズマは非常にまれですが、
海外ではときおり発生しているようです。


トキソに限らず、海外の水は病原体に汚染されていることが多く危険です。
汚染された水を飲む方法としては、よく消毒剤などがサバイバル用品でありますね。
しかし、消毒剤による処理は万能ではありません。

例えばトキソプラズマのオーシストは消毒剤が効きません。
近縁種のサイクロスポラ、イソスポラ、クリプトスポリジウムも同様です。
また、ランブル鞭毛虫(ジアルジア)のシストも消毒剤は効きません。
いずれも、ノロウイルスもびっくりの激しい下痢が特徴の原虫達です。
そう、ノロウイルスも消毒剤は効きませんね。


海外で水を飲みたいとき、一番良いのはミネラルウォーターを買うことです。
それも、現地製品ではなく海外の有名ブランドが望ましいです。
購入の際は、封が開いていないか(空ボトルに詰替えされてないか)確認すること。
でも、長期の旅行や田舎に行く際は、そうも言っていられないこともあるでしょう。
そんなとき、役に立つのが水を濾過する浄水器です。
スーパーに行くと、いろいろな種類の浄水器が売っていますね。
しかし、肝心の「フィルター径」が書いた商品はなかなかありません。
特に携帯用の(蛇口に付けるタイプでない)浄水器に関しては、
私の見た限りではフィルター径が明示してある商品は皆無でした。


なぜフィルター径が重要かというと、
病原体よりもフィルターの穴が小さくなければ、完璧な病原体除去はできないから
あたり前のことですね。
おそらく国内製品もこのあたりは考慮されているのでしょうが、
非常に重要な情報ですから、ぜひ明示してほしい所です。


私が知る限り、条件を満たす携帯フィルターは1ブランドしかありません。


アメリカ・MSR社が発売する浄水器シリーズです。
この商品は「フィルター孔径:0.2ミクロン」とはっきり表示されています。
0.2ミクロンとは、0.2µm、10,000分の2ミリメートルです。
この直径は、微生物研究室で水を無菌状態にする際の規格であり、
混入する微生物を完全に除去することが出来ます。
もともとMSR社は信頼性の高い携帯用ガソリンコンロで有名であり、
同社のコンロはヒマラヤ等で登山者に愛用されています。
この携帯用浄水器も「僻地探険に最も必要なのは、確実な飲用水の確保である」
というコンセプトのもとで開発されたそうです。


また、家庭用の蛇口用浄水器なら、
三菱レイヨンの「クリーンスイ」がフィルター孔径を明示しています。
製品詳細によると、搭載される中空糸膜は直径0.1µm以上の粒子を除去するそうです。
これなら先ほどの製品と互角以上の実力が期待出来ますね。



なお参考までに、様々な微生物のサイズを記してみます。

原虫(単細胞真核生物)類
・イソスポラ      10 x 20 - 20 x 30 µm 
・ランブル鞭毛虫    8 µm       
・トキソプラズマ    12 x 10 µm    
・クリプトスポリジウム 6 µm       
・サイクロスポラ    7-10 µm      

細菌類
・病原性大腸菌     0.5 x 1 µm
・チフス菌       0.6 x 2.0 µm 
・ブドウ球菌      1 µm

----------(フィルター径:0.2 µm)----------

ウイルス
・ノロウイルス     0.03 µm(=30nm: ナノメートル


上記の通り、この浄水器は原虫類と細菌類は確実に除去できますが、
一方でウイルスは除去出来ないことになります。
世の中に出ている小型浄水器で、ウイルスを除去できる製品はほぼありません。
ウイルスは非常に小さく、通常のフィルターでは対応出来ないのです。
これらを除去可能なフィルターとしては、限外ろ過膜や逆浸透膜があります。
言葉の通り、もはやフィルターとは呼びません。膜です。
限外ろ過膜は穴径が推定0.01-0.001µmとされています。
逆浸透膜(RO膜)は穴径が0.001µm以下、すなわち1nm 以下です。
RO膜を搭載した浄水器は、ウイルスを完全に除去するだけでなく、
水中のイオンまでも除去する、つまり海水を真水にできる能力があります。
家庭用のRO膜浄水器は、たとえばこのようなものです。


ちなみに、私が調べた多くのサイトでは、
逆浸透膜浄水器は放射性物質を除去可能であると記載がありました。
…ホントか??
そもそも放射性セシウムや放射性ヨウ素は、水中ではイオンで存在するはずです。
セシウムイオンは0.18nm、ヨウ素イオン0.21nm位の半径wikipediaよりですから、
RO膜では除去できるのか微妙なサイズです。
まあ実際には、イオンは水和してイオン半径より大きくなるでしょうし、
より小さいナトリウムイオンはRO膜で除去できている訳ですから、
放射性物質もかなりの部分で除去できたりするのかも知れませんが。

セシウム・ヨウ素を除去するには
イオン交換フィルターなんかどうでしょうね。
イオン交換フィルターは、陽・陰イオンをそれぞれ吸着するフィルターです。
セシウムはCs+、ヨウ素はI-で水中に存在しますので、
それぞれ陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂で除去できると思います。
ヨウ素(I2)を除去するには活性炭で良いでしょう。
すなわち、軟水製造機と活性炭フィルター濾過器を組み合わせれば、
ヨウ素イオンを除く2種類は除去可能ということです。
原理的には、ですが…

実際、濃度が極めて低いであろう放射性元素を除去するって、
かなり難しいことのような気がします。


(11/1追記)
同じような考察をこちらのサイトで発見しました
しかもうちよりずっと詳しいし、既に実用化されている…


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